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●山神様のおくりもの

 僕の住んでいる町から、南に50kmほどのところに、田沢湖がある。そしてさらに10kmのところには、秋田新幹線・角館駅がある。その角館駅からタクシーで15分。『田沢湖芸術村』という一見コロニーのような集合体がある。劇団わらび座は、この田沢湖芸術村を拠点に活動している劇団。

 いつも東北地方に関連のある題材を、ミュージカルや演劇、和楽器演奏などで公演を続けています。一昨年の代表作は、アイヌ民族を取り上げた『アテルイ』が好評をはくしました。そして昨年は僕の待ちに待った“マタギ”を題材に、『山神様のおくりもの』の公演がスタートしました。

 全国各地で公演され、予想以上の反響だったそうですが、予定終了で惜しまれつつお蔵入りするわけです。そのファイナルツアーが、ここマタギの発祥の地で3/23開催されました。僕も自分なりにマタギの世界を掴んでいますが、それをわらび座では、どのように理解し、表現してくれるのか、とても楽しみに出かけました。

◆ものがたり(PR用リーフレットから)
四季の彩り鮮やかな秋田の山里に、かつて「名人マタギ」と呼ばれた繁蔵と孫娘のさよが暮らしていた。訳あってマタギを止めてしまった繁蔵は、仲間の忘れ形見の弥之助を、一人前のマタギに育てようとしてきたが、外の世界に憧れる弥之助にはその気が無い。弥之助を兄のように慕うさよの心は揺れる。

 そこへ「伝説のマタギの孫娘・さよを嫁に」と、近在一の鉄砲ぶち“熊”が現われる。弥之助は「一緒に村を出よう」とさよに愛を告白するが・・

 これはミュージカルとしての脚本になっているので、歌とダンスによって、見応えのある場面や、感動的な場面を作り出しています。マタギの世界の厳しさや人情味、シキタリや作法などに関する表現は、実際のマタギの世界に非常に近いと感じましたが、あくまでも「近い」という事で、そこはやはり実際のマタギ世界とのズレはありました。厳しさといえば、繁蔵のマタギを止めた原因は、自分がシカリとして指揮をとった狩りで、判断を誤り仲間の家族を死に追いやってしまったという自責の念からですが、それは実際にもあったことのようです。シカリというのは、マタギ全員からの信頼を受け、絶対の権限を持つだけに、一つの失敗によって、シカリとしての信頼・権限を失う事になるようです。

 ただこのミュージカルは、男女の恋物語という副題があるわけで、マタギの信仰対象である山神様に因を発する女人禁制のシキタリと、どう絡ませるか・・・その辺に少々の不安と、ここをどのように表現するのかという、妙な期待を持っていました。マタギはイヤだ!という“弥之助”、クマを捕らせたら誰にも負けないという、マタギの申し子のような“熊”。この二人の男が、“さよ”という繁蔵の孫娘を奪い合う。という形で話が進むわけですが、“熊”がこう切り出します。『マタギなんだから、どっちが大きなイタズ(くま)を捕るかで勝負しよう。』

 これは実際のマタギの世界ではありえません。マタギというのは、どこまでも集団で狩りをするのであって、個人ではマタギとは言いません。そして熊を仕留めるのも、シカリが指名した人物以外は出来ない事になっています。抜け駆けや功名の禁止という決まりがあるのです。さらに山神様の下では女性に関する事一切が禁止されているのです。妊娠中の奥さんの旦那は入山禁止。入山10日前あたりから女性と一緒に寝る事は禁止。部屋も別々にして生活します。山では口に出して女性の話をするのは禁止。つまりあの醜い山神さまという女性神が、ヤキモチを焼いて、猟を失敗させたり人命を奪い去るという事を、固く信じているから、このようなシキタリがあるのです。

したがって、女の争奪戦にクマを賭ける(?)というようなことは、まったくあり得ない事なのです。

 このミュージカルでは、結局“熊”は“さよ”欲しさに、無謀にもたった3人で熊に挑み、留めを刺すのに失敗、逆にクマに襲われて、瀕死の重症を負ってしまいます。相手のイタズも手負いのイタズとして興奮状態で山をうろつきます。山はとても危険な状態。その山の中、“弥之助”は重症の“熊”を背負って診療所へ向かいます。死と背中合わせでモクモクと雪の中を歩く“弥之助”・・・・とうとう見かねた“繁蔵”が再び鉄砲の封印を解き、マタギ装束で山に入ります。そして手負いのイタズとの格闘の末、繁蔵はイタズを仕留め、“弥之助”はマタギに・・・・

 実際のマタギの世界を、どれだけ忠実に伝えているかと考えると、半分程度かな~と思います。しかしその100%の世界を知っているマタギ発祥の地に住む人々は、涙を流しながら頷きながら、満足げに観ていましたから、伝わるものは十分に伝わった素晴らしいミュージカルだった思います。つまり作品としての完成度が高い素晴らしいミュージカルだったと思います。

●余談

この会場に、劇団昴の菊池准さんが見えていました。お~これは凄い人とであったなぁ。菊地さんは僕とは一つ違い。演劇の演出家としては、宮本亜門とか蜷川幸夫など有名な人がいて、菊地さんもなかなか大変だなぁと、勝手に思っていたもんです・・・かつて。
それがなんと、この“山神様のおくりもの”の脚本・演出をされてたとい事で、本当に驚いてしまいました。終演後一枚お願いしました。⇒

 え~と・・・ついでですが、わらび座の次回公演作品は『男鹿の於仁丸』。4月12日から8月17日まで田沢湖芸術村・わらび劇場で行われます。くわしくはこちらでご覧ください。
http://www.warabi.or.jp/

主役の於仁丸役、戎本みろさんも会場にいましたので、一枚お願いしました。なかなかの雰囲気でしょ?


菊池准さん


戎本みろさん

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